~未来の年表 人口減少日本でこれから起きること~ Readerかんvol.1

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未来の年表

☆どんな本

「少子高齢化」「超高齢化社会」
私たちが義務教育から学び続けているこの言葉が真の脅威となる日は遠くない。近い将来、急激に訪れる人口減少について、問題意識を抱いている人は少なくないはず。しかし、その実態を明確に理解している人は一体どれだけいるのだろう。そして、人口減少がもたらす諸問題について、明確に記しているものはどれだけあるのだろう。
本著は「年表」という形で2017年から未来にかけて、人口減少がもたらす影響や問題点を具体的に描いている。そして本著の大きな特徴は多方面からの研究データや調査結果など確かな根拠に基づいて記されている点にある。人口減少が進む日本の行く末を記している貴重な一冊である。

☆どんな著者

河合雅司
1963年、名古屋市生まれ。中央大学卒。
産経新聞社論説委員、大正大学客員教授。専門は人口政策や社会保障政策である。過去には内閣官房有識者会議委員や厚労省検討会委員、農水省第三者委員会委員、拓殖大学客員教授なども務めている。また、2014年には「ファイザー医学記事賞」対象を受賞している。
著書に『日本の少子化 百年の迷走』(新潮社)、『地方消滅と東京老化』(共著、ビジネス社)、『中国人国家ニッポンの誕生』(共著、ビジネス社)、『医療百論』(共著、東京法規出版)などがある。

☆学び

①日本に訪れる4つの課題

日本の喫緊の課題を改めて整理するなら4点に分けられる。1つは言うまでもなく出生数の減少。2つ目は高齢者の激増。3つ目は勤労世代(20~64歳)の激減に伴う社会の支えての不足。そして4つ目は、これらが互いに絡み合って起こる人口減少である。

この4つの課題が人口減少に伴う数々の問題の根幹をなしている。本著で取り上げている人口減少が引き起こす問題を整理した「人口減少カレンダー」にはこのような問題が並んでいる。

2017年おばあちゃん大国に変化
2018年国立大学が倒産の危機に
2019年IT技術者が不足し始め、技術大国の地位が揺らぐ
2020年女性の2人に1人が50歳以上に
2022年ひとり暮らし社会が本格化する
2023年企業の人件費がピークを迎え、経営を苦しめる
2024年3人に1人が65歳以上の超・高齢者大国へ
2025年ついに東京都も人口減少へ
2026年認知症患者が700万人規模に
2027年輸血用血液が不足する
2030年百貨店も銀行も老人ホームも地方から消える
2033年全国の住宅の3戸に1戸は空き家になる
2035年未婚大国が誕生する
2039年深刻な火葬場不足に陥る
2040年自治体の半数が消滅の危機に
2042年高齢者人口が約4000万人とピークに
2045年東京都民の3人に1人が高齢者に
2050年世界的な食料争奪戦に巻き込まれる
2065年〜外国人が無人の国土を占拠する

この問題を見比べてみると別の問題が浮上する。それは「日本に待ち受けている問題は人口減少だけではない」という事実である。例えば、2022年の「ひとり暮らし社会が本格化する」については、人口減少に伴う高齢化に加えて、未婚率の増加や離婚率の増加などの問題も絡んでくる。このような背景には不満足な人間関係や育児や介護の人手不足、支援施設の不足など財政の問題もかかわってくる。人口減少だけでなく、多様な問題が絡み合い、問題が複雑化し、より一層問題が解決しにくい社会へと変容する。

②問題が表面化した時点では手遅れ

このような社会において、考えなければならないことは「事前対応」である。なぜなら問題が表面化した時点ではすでに複数の問題が絡み合い、解決が困難、もしくは解決に要する時間が膨大に膨れあがっている状態に陥っているからである。そのため、事前に起こりうる問題を想定し、問題が表面化しないように根本の要因を一つずつ解決していく必要がある。例えば、先に挙げた2022年の「ひとり暮らし社会が本格化する」を例に挙げたい。

そもそも「ひとり暮らし社会が本格化する」ことの問題点は何か。20代の若者が意気揚々と地方から都会に進出し、一人暮らしを始める。その結果、ひとり暮らし社会が形作られるのであれば、何も問題はない。しかし実態はそうではない。配偶者との死別により、否応なしに一人暮らしをすることになった高齢者がいる。幸か不幸か医療の発達により、平均寿命は工場の道をたどる。つまり、早期に配偶者を失った高齢者が、時代の進歩により長生きをするようになった。このような高齢者が増えることにより、ひとり暮らしの世帯数が増加するのだという。また、離婚の問題も取り上げられている。現状の日本では年間に3組に1組が離婚しているという現状がある。つまり、もともと同棲していた夫婦が離婚という機会を経て、ひとり暮らしをする。ちなみに年間の離婚件数は2016年のデータによると21万6805組だという。離婚した人々がゆくゆくは高齢者となり、配偶者をもたずにひとり暮らしを継続する。その結果が「ひとり暮らし社会」の形成である。

このような社会がもたらす問題は何か。それは介護施設・介護サービスの不足である。つまり十分な社会保障を受けることが出来ない高齢者が増加するのである。それだけではない。高齢者の分母が増えれば増えるほど高齢者に対する社会保障に費やす財源の割合は増す。その結果、人材育成に投資できる財源が減少する。そうすることで、問題を解決することが出来る優秀な人材は育ちにくくなり、問題に対する事後対応に追われ続ける将来が訪れる。

③事前対応の必要性

上記のような問題は表面化した時点ではすでに解決が難しい。ではもはや打つ手はないのか。決してそんなことはない。著者は具体的な10の解決策を提案している。先に述べるが、AIによる解決や移民の力に委ねた問題解決は現実的ではない。なぜなら、現状でも「AIに仕事が奪われる」という社会の不安があがっているが、奪われる仕事は「現在存在している仕事」である。このような歴史は過去にも繰り返されている。例えばシャッター街と化した商店街だ。かつてはにぎわっていた商店街も時代の進歩とともに百貨店や大規模商業施設に職を奪われてきた。AIに限らず、かつてあった仕事は時代の進歩とともに失われていくのである。では、何が重要か。それは時代に適応することである。本著では人口減少する社会においては、人口減少に合わせてAIをいかにうまく活用するかが求められるということを示している。時代に適した対応を取らねばAIがいかに優れていようが決して、救いの手にはなりえない。このような前提を踏まえて、著者が提唱する10の策に触れたい。
(1)「高齢者」を削減
(2)24時間社会からの脱却
(3)非居住エリアを明確化
(4)都道府県を飛び地合併
(5)国際分業の徹底
(6)「匠の技」を活用
(7)国費学生制度で人材育成
(8)中高年の地方移住推進
(9)セカンド市民制度を創設
(10)第3子以降に1000万円給付

などが著者の提唱する策である。賛否両論ある策であるというのは間違いない。例えば(1)「高齢者」を削減については、現状の「高齢者」の年齢区分を変更するというものである。これは少し前にニュースでも話題に上がっていた。実際のところ、医療の発達により、健康に過ごせる年齢は65歳以上を高齢者と定めた19世紀よりも向上している。準高齢者層を労働人口とみなすことで社会の支えての増加にもつながる。

また、(2)~(9)にかけては現在の常識を大きく逸脱するものが多い。たとえば(3)非居住エリアを明確化では、人が居住する地域と居住しない地域を明確に区分し、居住地域にのみ投資を行いコンパクトかつ利便性も高い地域を形成する。そうすることで無駄な投資を減らすことが出来る。このような改善策には地域住民からの反発も大いに考えられる。しかし居住地域がハブとなり、他の居住地域をつなぐパイプラインとなることで交通などの面から考えても無駄な出費を減らすことが出来る。そうすることで労働の担い手が減少する社会を「節税」という観点から改善していくことが出来る。

これから待ち受ける未曽有の問題の数々、それらを乗り越えるためには既存の何かを捨て、早期の対応が必要となる。何を捨て、何を得るのか。その答えはどこにも、歴史上にも存在しない。なぜなら、日本以上に急激に少子高齢化が進んだ国家はかつて存在しないのであるから。
では私にできることは何か。社会の行く末を知るための努力を積み重ね、自己の能力を開発し続けることではないだろうか。動くべきときに動くことが出来るような能力と知識を身につけておくことではないだろうか。そのようなことを強く感じさせられる一冊であった。

☆こんな人におすすめ

・日本の将来を知りたい人
・新たなビジネスチャンスを創造したい人
・教育に携わる人
・現在の教育に違和感を感じている人
・自分の目指す方向性を定めたい人
などなど

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