〜『Shall we ダンス?』アメリカを行く〜 Readerひとみvol.2

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『Shall we ダンス?』アメリカを行く

★どんな本

映画『Shall we ダンス?』が、アメリカ・ハリウッドでリメイク映画として公開されるまでの裏側を、監督・周防正行氏の視点から描いた一冊。

華やかで煌びやかな大ヒット映画の裏側には、その美しさとは正反対のドライで冷たい現実があった。

日米の映画製作事情や、文化的な違いから突如として降ってくる理不尽の嵐。その怒涛の日々から監督・周防正行氏が学んだこととは…?

※映画『Shall we ダンス?』とは
1996年に周防正行が原作・脚本・監督を務めて日本で製作された映画である。この映画はその年の日本アカデミー賞の13部門を受賞するほど、興行的にも文化的にも大ヒットしたということができる作品である。
そしてこの大ヒットを受けて、翌年1997年にはこの日本版の一部をカットしたものがアメリカでも公開され、動員数190万人、950万ドル(約12億35000万円、1ドル=130えん換算)を超える興行収入を記録し、大きな話題となった。そしてさらに2004年(日本では2005年)にはアメリカ・ハリウッドでピーター・チェルソム監督のもと、役所広司の役をリチャード・ギアが演じてリメイクされた。尚、このアメリカ版『Shall we Dance?』は、公開後5週は連続でランキングのトップ10入りを果たし、最終的には世界56ヶ国で上映されるほどの大ヒット作品として名を知られることになった。

★どんな著者

周防正行

日本の映画監督、脚本家。
主な作品として『ファンシイダンス』(1989年)、『シコふんじゃった』(1991年)、『Shall we ダンス?』(1996年)、『それでもボクはやっていない』(2007年)、『終の信託』(2012年)、『舞妓はレディ』(2014年)等。
また日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞等の受賞歴もある。

★学び

やりたいことをやる選択をすること

日本版『Shall we ダンス?』がアメリカで公開されるまでに、実はたくさんの紆余曲折があった。その最たるものとして、オリジナル版からのシーンのカットが挙げられる。

日本版『Shall we ダンス?』は上映時間136分。
それに字幕を付けて公開したカット版『Shall we ダンス?』は上映時間119分。
そして俳優たちも入れ替えて、脚本・撮影から全てアメリカ・ハリウッドで実施したリメイクにあたるアメリカ版『Shall we Dance?』は上映時間106分。

つまり一番、最初の日本版から、リメイクされたアメリカ版に至るまでの間に、約30分ものシーンがカットされてしまったのである。

それらのシーンがカットされた背景について周防氏はこの著書の中で、アメリカの製作側が興行的にヒットさせるということを優先さえたが故のカットであったと述べている。

実はアメリカ・ハリウッドにおいてヒット映画の共通項として、「上映時間が120分すなわち2時間を超えないこと」というものがあるのである。そしてアメリカにおいて映画を製作する際は、この観点を非常に重視する傾向にある。
たしかに映画をヒットさせることは製作側の人間になればなるほど、意識はするだろう。そしてヒットさせることに効果的だと思われる方法・手段は全てやり尽くすだろう。だから、この共通項を参考に映画のシーンをカットすること自体は決していけないことではない。

しかし、アメリカにおけるそれは、日本人の感覚の範疇を優に超えていた。
例えば、映画を公開する前にどのくらい映画が受け入れられるのか、どういった観点が観客には注目されるのかを知るために“スクリーニング”(日本でいう試写会)がアメリカでも実施されるのだが、その影響力の大きさは日本のそれの比ではない。
日本ではその試写におけるリアクションはそれほど重要視されない。むしろ映画監督や出演俳優陣を登壇させ、彼らのファンを集めて盛り上がる一種のイベントと化していることは容易に想像ができるだろう。
一方アメリカのスクリーニングは内容や出演俳優等もよく知らされず、ただこういう映画があるよと言われて、足を運ぶようなコアな映画ファンが対象になってくる。また事細かにアンケート調査を実施し、そのデータをもとに、必要であればラストシーンを作り変えやカットをも辞さないほど、スクリーニングから得られるものを重要視するのである。

だから、監督は自分の作りたいものを作るために最初はメガホンを握るが、公開される頃には自分のこうしたいという意志よりも、観客が付けた評価が反映された映画を作らざるを得ないとう状況に陥ってしまうことが往々にしてあるのである

周防氏もこのような環境下に身を置かざるを得なくなり、シーンのカット等の改編を受け入れていたことが多かった。そして、そのあらゆる場面において、多くの葛藤や恐れと戦っていたらしい。

しかし、アメリカ版『Shall we Dance?』の世界的なヒット、様々な映画祭で熱気を持って迎えられた経験を通して、周防氏は以下のように感じたと後に述べている。

「世界で何が通用するかなんて、誰にも分からない。肝心なのは作りたいものを作ることだと思う。」
「日本にいて世界に通用する映画とはどんなものかと考えるより先に、今自分が一番撮りたいと思うもの、そういうものを撮り続ければ、いつかそれが知らない間に認められることになる。」

ここ数年の日本や世界の状況を顧みたときに、やはり時代はどんどん動いていると感じた。
そうであるならば、この加速度的に進んでいく時代の中で、社会や時代が求め続けるものを探し求めることが果たして良いと言えるだろうか。

むしろ、自分がやりたいと思うこと・やると決めたことをこの社会に通用するものにまで昇華させていくことにこそ価値があるのではないだろうか。

一寸先がどうなるかさえ分からないこの時代だからこそ、自分が心から求めるものに生きていくこと。それを通して人は、真の豊かさや幸せを手に入れられる。

尚、周防氏はこの『Shall we ダンス?』のリメイクの後に、社会に対して本当に大きな問いを与えることになった作品である『それでもボクはやっていない』(2007年)や日本のミュージカル映画に旋風を巻き起こした『舞妓はレディ』(2014年)を監督として製作している。
社会に通用するとかを考えるのではなく、まず自分が求める作りたいものを作ることを通して社会にインパクトを与えていく。
その生き方を通して、心が求めることをやり続けることを正解にしている。

★こんな人にオススメ

✳映画・映像に興味関心がある人、またその裏側を知りたい人
✳世界的に活躍する人から学びを得たい人
etc…

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